2017年11月13日

【ライブレポート】Jazz Bar 渡辺香津美 A Night With Strings@新百合トウェンティワンホール

 いよいよスタートした【かわさきジャズ2017】。10日間にわたっておこなわれる同フェス2日目となる11月11日、新百合トウェンティワンホールにてギタリスト、渡辺香津美によるコンサート【Jazz Bar 渡辺香津美 A Night With Strings】がおこなわれました。

 すでに【かわさきジャズ】の名物企画となっているトウェンティワンの“Jazz Bar”公演。ジャズクラブさながらお酒や軽食とともにコンサートを鑑賞できるスタイルは、ゆったりと音楽を楽しみたい大人たちにぴったりです。さらに、この日のショーは2部構成で、前半はソロ・セット、後半はストリングス・クインテット(弦楽五重奏)を迎えての特別編成で日本を代表する名ギタリスト渡辺香津美の演奏を堪能できる、まさに“フェスティバル”にふさわしい贅沢な内容となりました。

photo1.jpg

 前半のオープニングを飾ったのは、ジャズのスタンダード曲「セント・トーマス」。以降、アコースティック/エレキギターを楽曲ごとに使い分けながら、ヴァーチュオーゾ・スタイル(ギター1本で伴奏とメロディを弾く)であらゆるジャンルの楽曲を自在に演じます。弾むように、ときに歌うように、叫ぶように奏でられるドラマチックなギターの音色。ソロ・セットとは思えない圧倒的な存在感と迫力にぐんぐん引き込まれてしまいます。

photo2.jpg

 ソロ・セットでは、自身の楽曲のほか今年2月に逝去したラリー・コリエルの「ジンバブエ」やマイルス・デイヴィス「マイルストーンズ」など、かねてからレパートリーとなっている楽曲が披露されました。ビートルズの「カム・トゥゲザー」では、ジョン・レノンさながらの“シャウト”で会場を沸かせる一幕も。

photo3.jpg

 そして、ストリングス・クインテットとともに再びオンステージした後半は10月にリリースされたばかりのニュー・アルバム『トーキョー・ワンダラー』に収録された珠玉の名曲を惜しみなく披露。同作のレコーディングにも参加した精鋭メンバーによって奏でられる芳醇なストリングス・サウンドの上で、七色に変化するギターの音色に観客も思わずうっとり。

photo4.jpg

ジャズ・フュージョンの金字塔「スペイン」からポップ・ソング「君の瞳に恋してる」、サンタナ「哀愁のヨーロッパ」、そしてアンコールのビートルズ「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」まで、渡辺の卓越したテクニックと音楽センスに裏付けられたアレンジによって華やかに彩られた名曲に存分に酔いしれる一夜となりました。

photo5.jpg


photo:Takehiko Tokiwa

◎公演情報
かわさきジャズ2017
【Jazz Bar 渡辺香津美 A Night With Strings】
日時:2017年11月11日(土)
会場:新百合トウェンティワンホール

<Set List>
M1. St.Thomas
M2. Zimbabwe
M3. Stella by Starlight
M4. May One and Only Love
M5. Soleil
M6. Come Together
M7. Milestones
-Intermission-
M8. My Favorite Things
M9. Spain
M10. HABANA
M11. 哀愁のヨーロッパ
M12. Flamenco Red
M13. 君の瞳に恋してる
M14. これからの人生
M15. Birdland

EC1. While My Guitar Gently Weeps
posted by かわさきジャズ at 17:39| Comment(0) | 日記

2017年10月28日

【かわさきジャズアカデミー】第5回レポート!ピアニスト・作曲家 前田憲男さん

9月にスタートした全5回のジャズアカデミーもいよいよ最終回。

この日の講師は数々の人気TV番組の音楽を手がけたことでも知られる巨匠、前田憲男さん。

テーマはズバリ「音楽の疑問にすべて答える80分」!!

盛大な拍手で迎えられた巨匠。約5分間のピアノ生演奏を終え「会場が昭和のムードに包まれていて安心した。今日は2時間も話をするというキツイ労働条件ですが、頑張ります。」と、あいさつ代わりのジョークで会場を和ませる前田先生。

PA270028.JPG

この日の講義は、事前に募集した受講生からの質問に前田先生が次々と答えていくスタイル。御歳82歳、半世紀以上にわたり日本の音楽・芸能界とともに歩んできた巨匠ならではの名言・格言はもちろん、ウィットに富んだジョークやおちゃめな発言も多数飛び出しました。

というわけで、前田先生による名回答を一挙掲載!

Q1. ジャズ演奏でやってはいけないことは?
A.「でしゃばらないこと。」

ジャズに限らず、音楽において人と違うことをやる=オリジナリティは必要だが、全体のバランスを崩してはいけない。目立ちたがり屋になってはダメなんだ。

Q2. ビッグ・バンドが衰退した理由は?
A.「キャバレーの衰退によりビッグ・バンドは演奏の場を失った。」

かつてビッグ・バンドの演奏の場といえばキャバレーだった。キャバレーが衰退し、ビッグ・バンドは定期的に演奏する場を失ってしまった。その結果、バンド経営は厳しい状況となり、日本の多くのビッグ・バンドは解散を強いられたんだ。

Q3. ビッグ・バンドの生演奏は現在どこに行けば聴ける?
A.「ぜひ学生のライブを観てほしい!」

日本の学生ビッグ・バンドは今、ジャズの本場アメリカの学生たちも驚くほどにレベルが高い。私が審査員を務めている【YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST】に、ぜひとも学生の演奏を聴きにきて欲しい。絶対に損はさせない!

Q4. ピアノ(鍵盤)の並びは「ハ長調偏重」では?並びが変われば新たな音楽が生まれるのではないか。
A.「楽器の構造は音楽に影響しない。音楽は人の頭の中から生まれるものだ。」

楽器は演奏をしやすいように、ある程度構造が統一されている必要がある。たとえ楽器の構造が変わったとしても、音楽そのものへの影響はないだろう。なぜなら、音楽というのは楽器からではなく、人の頭の中から生まれてくるものだから。

PA270025.JPG

Q5. 現在の音楽シーンをどう思う?ビジュアル重視で音楽が後回しになっているでは?
A.「嘆かわしいと見るか、時代の変化だと受け流すかは自分次第。」

「グループがダンスをしながら歌う」ことが主流となった今、たしかにメロディーが後回しにされている部分はあるだろう。ダンスも今や必修科目だ。変化を嘆かわしいと見るかどうかは自分次第だが、あまりこだわりを持ちすぎない方がいい。どうでもいい問題だ。

Q6.「名演」と「たいしたことない演奏」の違いを説明して!
A. 「同業者批判は御免!自分で解決してください。」

良いか悪いかは聴き手それぞれが決めるもの。他人が決める問題ではない。固い卵焼きが好きならそれを食べればいいんだ。要は個人の好みの問題。他人の意見は「参考」程度でいい。最終判断は自分自身、自分で解決してください。

Q7. 何をもって「ジャズ」と呼ぶ?その定義とは?
A. 「レコード屋に行けばいい。ジャズの棚に並んでいればそれはジャズだ。」

ジャンルなんてその程度のもので、気にする必要はないし、絶対に社会問題にならない。自分が好きなものを好きなように聴けばいいんだ。

Q8. シンコペーションの定義とは?
A. 「ネットを活用してください!5分くらい見ていれば分かるはずだ。」

…と言いつつ、「シンコペーテッド・クロック」や「茶色の小瓶」などの楽曲を聴きながら
、ホワイトボードを使って丁寧に解説してくださいました。

PA270045.JPG

Q9. アドリブ上達のコツは?
A.「徹底的にマネをすること。ご努力いただきたい!」

まずは「上達したい」という意欲を持続すること。そして、目標とするプレーヤーのアドリブを徹底的に真似る。そして、そのメロディーを半音ずつあげて演奏していく。すべてのキーでの演奏をマスターできれば、アドリブも出来るようになってくるだろう。理論からアドリブは出てこない。努力あるのみ。

Q10. 難解なアドリブを理解する/楽しむには?
A.「無理して聴かなくていい!楽しいと思えるものを聴けばいい。」


Q11.アドリブに楽譜はあるの?
A.「ある。自由にやっていると思ったらそれは大間違い!」

メモ帳程度の決まり事はあるんだ。

Q12.「良いソロと良くないソロの違いは?」
A.「良いか悪いか、自分が聴いてどう感じたか。それしかない。」


Q13. コード進行の記憶法は?
A.「ネットで調べる。それが一番手っ取り早い!」


Q14. 移調のコツを教えて欲しい!
A. 「それはプロでも難しいこと。一生懸命勉強するしかない。」

曲を覚えるとき、そのコードが何番目に来るものかを覚えておく。一生懸命勉強するように!2年くらいはかかると思うが…

Q15. フリージャズのプレーヤーは、みなスタンダードも演奏できる?
A.「いい質問だ。できる人とできない人、両方いる。」

フリージャズに基本は必要ないが、「自由」を求めてスタンダードからフリージャズの世界に飛び込むミュージシャンは多い。彼らはもちろんスタンダード演奏もできる。たとえば山下洋輔や佐藤允彦など。あとは自分で探してください!

Q16. ジャズで使用する楽器、着用する衣装などに決まりはあるの?
A.「ない。」

決まりはないが、ご存知のとおり「よく使われる楽器」というものはある。服装も自由だがスーツやタキシードなど、TPOをわきまえた服装をしている。帽子やメガネは目立ちたければ着ければいい。

Q17. ジャズは小さな子供でも分かる?何歳から?
A.「子供でも分かる。」

私は物心ついたときからジャズ・スタンダードの「煙が目にしみる」を知っていた。5歳の頃だった。それ以前の記憶はないが、もっと前から聴いていたかもしれない。

PA270028.JPG

Q18. ジャズだけでなく、クラシックの話も聞かせて!
A.「私の原点はベートーヴェン「ムーンライト(月光)ソナタ」だ。」

両親が音楽教師であり、幼い頃からピアノは遊び道具だった。父親の膝の上でたくさん聴いた「ムーンライトソナタ」は私の作曲の原点。楽曲構成のサンプルとしてとても秀逸なんだ。また、ショパンの「英雄ポロネーズ」は、高校時代の私に大きな衝撃を与えた楽曲だ。

Q19. どうやって独学でピアノをマスターしたの?
A.「覚えていないが、小さい頃から抜群に上手かった。」

どうやって練習したかは覚えていないが、両親にうるさく教えられなかったことが逆に良かったのだろう。

Q20. ピアノ選びについて。どのメーカーのピアノがいい?
A.「それは言えない!!」

会場・現場に用意されているピアノはスタインウェイであることが多く、一番弾く機会が多い。どのメーカーのピアノであれ、いつもきちんと調律された最高の状態で弾かせてもらっているが、実際、頭の中では「このメーカーのピアノに当たりませんように…」というのはある。もちろん、ここでは発表しない!

と、質問はここまで。

残り時間が10分となったところで最後のお楽しみ、ミニ・コンサートへ。「リクエストを受け付けるよ!」とのお言葉により、受講生から飛び出した「ブルースのコード」「サテン・ドール」と2つのテーマを交えての即興演奏。流麗なピアノの音色が広がると、会場はコンサートホールに一変。

PA270066.JPG

今回もあっという間の2時間!巨匠ならではの説得力あふれる言葉でたくさんの疑問に回答してくださった前田先生。この日の講義の中で何度も飛び出したのは「自分が好きな音楽を自由に聴けばいい。」というお言葉でした。私たちは、ついついジャズを難しく考えてしまいがちですが、実はそれこそが「ジャズの一番の楽しみ方」なのかもしれませんね。

前田憲男さんは11月10日、新百合トウェンティワンホールにて【かわさきジャズ2017】のオープニングを飾ります。⇒公演詳細はこちら

【かわさきジャズ2017】開幕までいよいよ2週間を切りました!川崎の街がジャズで溢れる10日間。今年はジャズはもちろん、ソウルやラテン・ミュージック、ポップスなどより幅広いジャンルのアーティストが日夜ステージを彩ります。【かわさきジャズ2017】が、みなさんにとって「好きな音楽を自由に聴く」場になることをスタッフ一同願っています!

ぜひ、会場に足を運んで生(ライブ)ならではの醍醐味を体感してください。
posted by かわさきジャズ at 12:14| Comment(1) | 日記

2017年10月16日

【かわさきジャズアカデミー】第4回レポート!ドラマー 則竹裕之さん

 いよいよ【かわさきジャズ2017】開幕まで1か月。全5回の大好評プレ企画【ジャズアカデミー】も、ついに後半戦。第4回目の講師はTHE SQUARE(現T-SQUARE)での活躍などで知られる名ドラマー、則竹裕之さん。渡辺貞夫さん、渡辺香津美さん、DIMENSIONなど多数の一流アーティストのバンド・メンバーとして引っ張りだこの超売れっ子ドラマーが語る、「音楽とリズム」論とは…?

01.jpg

 会場となる市民交流室の前方中央にドラムセットがドーン!これだけでもう、ワクワクしますね。この日の講義は約15分間のドラムのソロ・パフォーマンスからスタート。一流のプレイヤーによる生演奏を超至近距離で体感できるのもジャズアカデミーの醍醐味です。現在、昭和音楽大学で教鞭をとる則竹さんですが、アカデミーに集まった熱心な音楽ファンのみなさんを前に、とても緊張しているとのこと。緊張を緩和するために「 関西弁で喋らせていただきます。」と宣言すると会場は一気に和やかな雰囲気に。

02.JPG

 ドラマーだった父親の影響で自宅のリビングにドラムセットがあったため、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンのレコードにあわせてドラムを叩くような少年だったという則竹さん。そうした環境で自然とテクニックを身につけていったため、「ドレミのことや音楽理論は分からない」と話す則竹さんですが、もちろんドラムに関しては例外。成り立ちや変遷など、100年あまりのドラムの歴史や変遷を分かりやすく解説してくださいました。

03.JPG

 また、駆け出しの頃に“ジャズドラムの神様”ことジョージ川口さんのリハトラ(リハーサル時に本人に代わって演奏をおこなうこと)を急遽務めたというエピソードも披露。圧倒的なテクニックで知られ「ピアノのようにドラムを叩くのが夢」という則竹さんですが、当時ジョージ川口さんのエネルギッシュなプレイを目の当たりにし、「繊細すぎる人はドラマーに向いていない」と痛感したそう。以降、自身のプレイが小さくなっていると感じたときには、ジョージさんのプレイを思い出すようにしているのだとか。

04.JPG

 講義の後半は「リズム」の話。アフリカ・カメルーンのリズムやアメリカ・ニューオーリンズ発祥のリズム=セカンド・ラインなど、現在の音楽のルーツとなるリズムを実演を交えながら紹介。受講者のみなさんも手拍子で参加した実演では、何度か「やり直し」をおこなう一幕もありましたが、こうしたハプニングはかえって場を和やかにしてくれる効果も。最後の質疑応答では、ドラム・ソロについての自身の思いや、「木魚を叩いたことはあるか?」という想定外?!の質問にも丁寧に答えてくださった則竹さん。

 最後はふたたびサポートを務めるDIMENSION「Seven Movements」を生パフォーマンス。圧倒的なテクニックによって繰り出される超絶ドラム・プレイをもって講義は終了。バンド・サウンドのなかでは、あまり意識して聴くことのないドラムの音やリズムに改めて耳を傾けることで、受講者のみなさんも新たな発見があったのではないでしょうか。また、パワフルなドラム・プレイとは一転して則竹先生の優しく穏やかな人柄が随所ににじみ出る、アットホームな講義となりました。

 次回はいよいよ【ジャズアカデミー】最終回!10月27日、巨匠・前田 憲男さんによる「音楽の疑問にすべて答える80分」です。また、則竹さんは【かわさきジャズ2017】のフィナーレを飾る11月19日【MASATO HONDA SPECIAL AFTERNOON LIVE】に出演します。<公演詳細はこちら>

アカデミーの最後に披露された「Seven Movements」、2015年のパフォーマンス映像です。
posted by かわさきジャズ at 12:39| Comment(0) | 日記